情熱とビジョン:北海道大学創基150周年記念講演 ハイライト

2026-09-18

2026年8月6日、創基150周年を記念した記念講演会が札幌キャンパスにある学術交流会館で開催されました。登壇したのは、ノーベル賞受賞者であり北大・化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)の特任教授を務めるベンジャミン・リスト教授と、北大の同窓生でもあるMITメディアラボ副所長の石井裕教授です。化学とヒューマン・コンピュータ・インタラクション(人間とコンピュータの相互作用に関する研究)という異なる分野で活躍する両氏ですが、その講演で共通していたのは「画期的なイノベーションは、情熱、大胆な発想、そして人と人の深いつながりから生まれる」というメッセージでした。会場には学生や研究者、大学の教職員や地域の方々など多様な参加者が集い、講演に耳を傾けました。

WPI-ICReDDのベンジャミン・リスト教授(撮影:長谷川亜裕美)
触媒の歴史について講演するベンジャミン・リスト教授(撮影:広報インターン Ken)

講演の冒頭、リスト教授は触媒を「私たちの生活にとって最も重要な技術」と述べました。ノーベル賞受賞につながった有機触媒の研究を振り返りながら、海洋ごみ問題や気候変動といった地球規模の課題に対処するうえで、環境に配慮した化学である「グリーンケミストリー」が果たす重要な役割を強調しました。 微小な反応場を持つ酸触媒(confined acid catalysts)に関する最新研究をはじめ、北海道大学WPI-ICReDDチームとの継続的な共同研究を取り上げながら、リスト教授は光を用いて二酸化炭素を分解する「究極の人工光合成」という壮大なビジョンを語りました。そしてスティーブ・ジョブズの功績に言及し、次世代の研究者たちに向けて、「クレイジー」なアイデアを持ち、大きな夢を描くようエールを送りました。

MITメディアラボの石井裕教授(撮影:長谷川亜裕美)
「3つの原動力」について語る石井裕教授(撮影:広報インターン Ken)

リスト教授の講演に続き、石井教授は参加者に対し、「共感」を最優先に据えたデザインの重要性を呼びかけました。教授は「出杭力」「道程力」「造山力」という3つの行動指針のもと、自身のフレームワークである「EEEI(構想する・具現化する・巻き込む・刺激を与える)」を紹介しました。

さらに石井教授は、亡くなった愛する人たちとの絆を取り戻すことで、世界的な孤独の問題に向き合うプロジェクト「Teleabsence」を披露しました。ジェイムズ・ジョイスの「不在こそが、最高の存在形態である」という名言を引き合いに出しながら、技術の真の価値は人と人のつながり(共鳴)から生まれるのだと参加者に訴えかけました。「成功とは、自らの行動が周囲の人々と共鳴したときに初めて訪れるものなのです。」

リスト教授との質疑応答の様子(撮影:広報インターン Ken)
合同質疑応答の様子(撮影:長谷川亜裕美)

講演後に行われた質疑応答セッションでは、参加していた学生からリスト教授へ「なぜ触媒分野を専攻するに至ったのか」という質問が寄せられました。リスト教授は自らのキャリアを振り返りながら、「触媒の研究が自然と心に響き、純粋な情熱を掻き立ててくれた」と語り、会場の若手研究者らに向けて「自分自身の情熱に従いなさい」とアドバイスを送りました。

記念講演会の締めくくりに、「情熱に裏打ちされる卓越した技術力と、共感(思いやり)に基づく行動が合わさったときこそ、世界を変える進歩が生まれる」という力強いメッセージが両教授から参加者へ送られ、会は幕を閉じました。

講演終了後、総合教育部(総合理系)に所属する学生が、この講演について振り返りました。
「リスト先生からは興味深い研究の話が、石井先生からは印象的なメッセージが聞けたため、それぞれのお話が心に残っています。「自分の進みたい学部への移行を叶えるため、夏休み中も勉強を頑張りたい」、「英語のスピーチコンテストに出場して、優勝したい」と目標への想いを強めました。

創基150周年に向けて歩みを進める北海道大学において、リスト教授と石井教授から得られた知見は、学生、研究者、そしてすべてのイノベーションを生み出す人々にとって、刺激に満ちた未来への道標となるでしょう。

(再編:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 広報インターン 石川葵)
(撮影:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 長谷川 亜裕美、広報インターン WORAKORN TANGSANGASAKSRI)

この記事の原文は英文です(Enthusiasm & Vision: Highlights from the Hokkaido University 150th Commemorative Lecture